白衣は身を守るためのものだった

白衣は医療用のユニフォームとして広く認識されているが、このようなイメージを持つ人が増えたのは近代になってからのことだ。白衣はもともと化学や物理学、生物学などの科学者が実験するときに身を守る目的で生まれた歴史がある。危険な薬品などが直接皮膚や衣服に付着して事故が起こらないようにするための防護服としての意味があるのが白衣だ。白が選ばれているのは薬品などが付着したのがはっきりと見えるようにするためである。医療ではもともと黒いものを着用していた。病気の人の治療をしていたのは教会だったため、神父や修道女が着ていた服が医療関係者の着用する白衣の起源と考えられるものだからである。その状況から真っ白の白衣が採用されるようになったのは、西洋医学によってエビデンスに基づく医療を提供するようになったからだとされている。科学に基づいた医療を行うようになり、医療関係者も科学者のユニフォームとして白衣を着るようになったという説が有力なのだ。臨床現場では血液や体液の付着により感染が広がるリスクがあり、医薬品が用いられるようになってからは医薬品が付着する懸念も生まれた。医療関係者が身を守る役割も果たすものとして白衣が重視されたのである。導入された後は医療における白衣は実験用白衣とは違う歴史を辿っている。衛生を重視している面もあったので白が用いられていたが、現在では色付きの白衣も増えた。機能性も重要と捉えられ、動きやすいスクラブやケーシーが人気となっている。